のじシネマ

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【映画】イナゴの日 あらすじと感想 主演のドナルド・サザーランドはいつ登場するのか【シュール!】 


1930年代のハリウッドを舞台に、端役女優と彼女をめぐる男たちの話。

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原題は『The Day of the Locust』 
そのままね。

 

作品情報・キャスト

上映年度 1976年 
上映時間 143分
監督 ジョン・シュレンジャー
脚本 ウォルド・ソルト

 

アサニエル・ウェストが1939年に発表した小説の映画化。
本作品は『真夜中のカウボーイ』と同じ監督、脚本家が手掛けている。
作風や登場人物もどこか『真夜中……』を意識しているように感じられる。
 

nojirika.hateblo.jp

 

これもアメリカンニューシネマね。 

 

   キャスト
・ホーマー・経理担当の独身男 (ドナルド・サザーランド)
・フェイ・エキストラ女優 (カレン・ブラック)
・トッド・映画会社で美術を担当 (ウィリアム・アザートン

 

 

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あらすじ

1938年のハリウッド。


エール大学を出て映画会社で働くトッドと脇役女優のフェイは同じアパートの住民。
トッドはフェイに惹かれているが、フェイはトッドに友人以上の関係を望んでない。
ある日フェイは父を通じて年上男性ホーマーと知り合い、父亡き後のフェイはホーマーと暮らし始めるのだが……。

感想

描かれている世界は1930年代後半ですが、これが撮影された1970年代の閉塞感を同時に表している作品だと思います。
これは要るの?と首を傾げてしまうシーンも多く、冗長気味な印象はあります。

ドナルド・サザーランドが主人公?
えっ、どこにもいない

主人公はドナルド・サザーランドなのですが、全編143分のうち40分を過ぎるまでドナルド・サザーランド演じるホーマーは登場しません。

その話は有名らしいのですが、何の予備知識もなかったため、トッド(ウィリアム・アザートン)がドナルド・サザーランドだと思い込んでいまい、こんなに顔を変えられるとはさすが俳優と一人で感心してしまいました。

最近の映画の多くは「ハリウッド三幕構成」が用いられているので、主人公や重要な人物が物語の半ば近くになって登場する作品は滅多にないと思います。
そういった意味でも一風変わった映画というか、よくわからない不思議感はあります。

観終わって言えるのは、登場人物として重要なのはフェイとトッドの2人だということ。
ホーマーは彼らより年齢が上なぶん2人と違う苦しみを抱えてはいますが、若い2人を社会的な立場で眺めているといった印象です。

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みんなが苦しんでいる時代

フェイはかわいくてプライドの高い女性ですが、女優としては端役ばかり。
成功したいけれど成功はできそうにない。
明るく振る舞っているけれど内心に鬱積した思いがあって、自制の効かない行動を取ってしまうことがあります。

トッドは映画の世界に入りたくてエール大学を卒業して映画会社に入社。
自分が担当した映画のセットで事故を起こして多くの負傷者を出してしまうものの、上層部は保険が出るし、事故など誰も話題にしないから問題ないと涼しい顔でいることに強い違和感を抱いている。

ホーマーは経理で働いてきたしっかりした男性ですが、最愛の女性が目の前から消えたトラウマから立ち直れません。
フェイと一緒に暮らしはじめて最初の頃は幸せそうにしていたものの、フェイのおかしな行動に苦しむようになっていきます。

 

それぞれが楽しく平和に暮らしているようで、実は負のエネルギーや怒りを内面に秘めいます。
時は世界第二次世界大戦に突入する寸前、不安定なアメリカの雰囲気がよく描かれています。

インテリアとファッション

フェイのドレスが繊細で美しい。
エキストラばかりの売れない女優とは思えない服装なのですが、生活感を感じさせないようにしかたったのか、フェイのプライドの高さを表現したかったのかもしれません。
衣装デザインはアン・ロスが手掛けています。


トッドとフェイが暮らすアパートも場所はハリウッドにある設定ですが、ハリウッドらしい建物というよりは、メキシコの民家のようでかわいらしい造りのアパートです。

またトッドが勤める映画会社の上層部家らしき室内に、一瞬ですが「エニスハウス」が登場しています。
「エニスハウス」はフランク・ロイド・ライトが設計した邸宅で『ブラックレイン』『ブレードランナー』『13F』のロケで使用されていることでも有名です。
 

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 イナゴの日
タイトルの意味

集団の恐怖と群像心理が時代背景とともに描かれています。
あまりにも唐突な展開に驚いてしまうと思います。
しかもハリウッドの映画館の前でそれは起こるのです。

たとえば『JORER』のラストを思い出すほどの衝撃。
何かのきっかけで抑制を失うと、人はどこまでも壊れていく様子をイナゴの大群にたとえています。

ホーマーは普段とても我慢強い男性でしたが、子供にからかわれたことで抑制力を失い怒りの感情を爆発させます。

トッドは人がイナゴの大群ようになったとき、自分が仕事で描いたデッサンを思い浮かべます。
世の中が戦争に向かっていくなかで、自分は夢を抱いて映画の世界に入ったはずなのに、手掛ける仕事は戦闘シーンばかりで描く人物の表情も暗くなってきました。
その自分で描いた顔が自分のことを見つめていた。

その後、ホーマーの家からアパートに戻ったフェイですが、トッドはアパートを引き払っていました。

 

それでは今日はここまでで。
のじれいか でした。

 


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