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【映画】普通の人々 あらすじ・感想【ロバート・レッドフォード監督作品】自分は愛されていないと思う人に観てほしい

 

愛は大変に不平等なもの。

ふかーく納得で
星★★★★★ 5 

そう、愛は大変に不平等なもの。 

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作品情報

公開年度
上映時間
監督 ロバート・レッドフォード

 

第53回アカデミー賞 作品賞、助演男優賞、脚色賞
第46回NY批評家協会賞 作品賞
第6回LA批評家協会賞 助演男優賞
ゴールデングローブ賞 作品賞、女優賞、助演男優賞、監督賞、新人男優賞

当時の映画の賞を総なめにした作品。 

www.youtube.com


キャスト

ジャレット・カルビン 弁護士、カルビン家の夫であり父(ドナルド・サザーランド)  

ベス・カルビン カルビン家の妻であり母(メアリー・タイラー・ムーア

コンラッド・カルビン カルビン家の次男、高校生(ティモシー・ハットン) 

精神科医 ジャレットの精神科医 (ジャド・ハーシュ)

ジェニン ジャレットのガールフレンド(エリザベス・マクガヴァン

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あらすじ

カルビン家は、夫婦と息子2人の4人家族。
夫であり父親のジャレットは弁護士、妻であり母のベスは社交的な性格で友人も多い。
次男のコンラッドは精神を病んで精神科に通うが、そのことを母ベスは周囲にひた隠しにするのだった。 

普通の人々? 

映画の原題(タイトル)は何かと思えば『Ordinary People』(普通の人たち)。
そのままの邦題でした。


どうして原題が気になったのかというと、冒頭から「普通」といえるほどには「普通じゃない」ように見えたからなのですが、物語は既に普通じゃなくなっているところから始まっていたのです。

そう、始まりから普通じゃない。
その理由が段々とわかってきます。


息子のコンラッドはカミソリで自殺を図った後に精神科に通ってるし、夫婦もスキンシップは盛んではありますが、内面は見かけほど触れ合ってはいません。
 

その理由が。

 

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カルビン家の人々

母(妻)ベスは、外交的な性格で一見明るいのですが、弱っている次男を包み込むどころか明らかに持て余しています。

夫のジャレットは弁護士で経済的には恵まれて幸せそうに見えるけれど、一人思い悩んでもいます。

コンラッドは繊細で自意識過剰。好きな女の子の言動が気になるのですが、その自信のなさの根底に母ベスから愛されていない自覚がありました。

確かに本人が感じているようにジャレットはベスから愛されていない。
ジャレットの確信は当たっているのです。

 


ベスは亡くなった長男だけを愛していたから事故死した長男の死が受け入れがたく、ジャレットとコンラッドに対して心を閉ざしていました。

 

実の子だからって同じように愛せるわけじゃない。ベスはそういう女性

 


特にコンラッドに対しては長男の死に関わっていることもあり、もしかすると憎しみに近い感情も持ち合わせていたのかもしれません。  

コンラッドの闇 

コンラッドは自分を責めることが、当たり前になっていますが、精神科医に心を開いたときに現実を受け入れて出口を見出します。

そしてコンラッドは父に、自分に怒りをぶつけて欲しいと訴えます。

母親のベスに対して自らハグをして心を開かせようとするなど、子供の方から愛を与えるコンラッドが涙が出るほどにいじらしい。

息子の方から折れて、ここまで心を開いたというのに、ベスはそれを受け入れようとしないばかりか、逃げるように背中を向けてしまうところが何とも切なくやるせない気持ちにさせられます。

夫婦のあり方とそれぞれの思い

妻のベスは自分に正直で、自分に対して嘘を吐くことができない性格。
幼稚さああるけれど、自分の気持ちには素直な女性です。

一方、夫のジャレットはバランスの取れた大人の男性で、きっと不幸なことが起こる前は妻の子供っぽさも含めて愛していたのでしょう。
でも状況が大きく変化してしまい、少し前の時代の男性にありがちな妻に任せきりの夫から変化しなくてはと思いはするものの、上手くいかず悩みます。

そうするうちにジャレットは、妻がもしかすると次男のコンラッドだけではなく、自分のことも愛してはいないのではないかと考えるに至ります。 

まとめ 

悲しいことなのですが、愛は平等ではなく酷く不平等なものなのです。
少し似た話だと『エデンの東』がありましたが、本作はそれより遥かに悲しい。


これは全くの私感ですが、私はこの話に似た環境で育ったので、コンラッドの心情にはとても同感でき、また実はちょっと似た状況を経験してもいます。

なのでコンラッド精神科医のように何かアドバイスができるとしたら、愛されない人からの愛情を渇望することは惨めな人生を送ることに繋がるということでしょうか。

無償の愛があって当たり前と思われてしまいがな親子の関係において、自分が愛されていないことを受け入れるのは辛く悲しいことです。
愛されずに育った人は、その先の人生に影を落とし愛に飢えた人になりがちです。

ただ愛せない側にも事情があります。(この場合は親)


親だって万能ではありません。だから愛せないものは愛せない。
愛という感情は義務で出来上がっているわけではない、育んでいくものでもあるのですが、努力しても愛せないものは仕方ないのかもしれません。

それなら離れるしかない。
互いに愛せる人と暮らした方がいいんです。

ラスト近くになり、コンラッドが新しい愛を育むきっかけをつかめ、大きく成長できたところが救いでした。

父ジャレットだけはコンラッドとの愛を再構築できて本当によかった。

 

しかしロバートレッドフォードは本当にすごいと思いました。
ロバートレッドフォードの監督作品で印象的なのは『リバー・ランズ・スルー・イット』『モーターサイクル・ダイアリーズ』(『リバー……』は製作総指揮でした)。


かっこよくて賢くて何でも持っていると思えるような人なのに、こんな捻れた感情を描くことができるとは。

2018年に俳優引退すると報道されていましたが『クリントイーストウッド』のように監督業でまだまだ作品を作り出してほしいと切に願ってしまいます。

 


最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

のじれいか でした。


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