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【映画】風たちの午後 1980年に吹いた風の匂いがする【ネタバレ・感想】


1980年の東京。二人の女はルームメイト。そして女は、女に恋をする。

レズビアンをテーマに取り上げた邦画は当時としては珍しく、センセーショナルに受け止められたのではないでしょうか。主人公の不器用さ、愛される女性の美しさが光る、繊細な映画でした。

本作は矢崎仁司監督のデビュー作。1982年にヨコハマ映画祭で自主製作映画賞を受賞、2019年にデジタルリマスターされ再上演されました。

 

 


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作品情報・キャスト 


公開年度 1980年
上映時間 105分
監督 矢崎仁司

キャスト 夏子(綾せつ子) 、美津(伊藤奈穂美)、美津の彼氏(杉田陽志)
 

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あらすじ


保育士の夏子と、美容師の美津の二人は、アパートで一緒に暮らしている。

夏子と美津にはルールがある。それは男の人を連れ込んだとき、窓の外に男物のハンカチを下げておくというもの。

夏子は美津の誕生日に、お揃いのネックレスとケーキに花を買い部屋に戻ろうとするが、美津はそのとき部屋で彼氏と抱き合っていた。

ベランダで揺れるハンカチを見た夏子は公園で時間を潰し、そして美津が眠る部屋へと戻る。





感想(よかったところ)



1980年の匂いがたまらない

独身の若い女たちの暮らしがすごくリアルです。たとえば部屋も今のようにおしゃれではなく殺風景でどこか破滅的。この時代にIKEAニトリもないですからね、殺風景なのも仕方ないのかも。

また街の風景からも80年代の空気が匂います。素敵なカフェが出てくるわけではないし、レストランや出てくるわけではない分、生々しさが際立ちます。

演出として興味深かったのは、二人の不安定な関係を表すように、アパートの水道の蛇口から絶えず水が落ち続けるところ。有限な時間を示す秒針のような役割をしていました。


かわいい女子、自分にない魅力に惹かれ


夏子はかわいいタイプですが、美津は今でいうクールビューティー。二人の正確な年齢や出会った経緯については、説明されないためわかりませんが、美津の方がちょっとだけ年上なのかも。

そんな美津は、お姉さんのような存在感があり、絶世の美人とは違うかもですが魅力的で唯一無二感がある女性。スタイルもよく身のこなしや佇まいも素敵。夏子が美津に惹かれるのはわかる気がしてきます。(百合ではなくても惹かれる)


美津の彼氏は、店に出入りする美容品を扱う会社の男で、二人の関係を知った夏子は、男に対して嫉妬する。そして美津と男を引き離すため、男に同僚を紹介し、また夏子自身も関係を持つ。

素直に恋心を打ち明けられない夏子も残念ですが、男がとにかくサイテーです。夏子と美津が一緒に住んでいることを知りながら、夏子の同僚とも付き合えるそんな男。でも美津にとっては大切な相手でした。

感想(残念だったところ)

 

夏子は美津に理解されぬまま…(ネタバレあり)

彼氏から「夏子はお前のことが好きなんだぜ」と聞かされても、美津にとっては、彼氏と夏子が関係を持った事実の方が重要だった、それが答えなのでしょうか。

すべては夏子が望んだことですが、美津は夏子をどこまで理解したのだろう。たとえ理解しても結ばれることはないのでしょうが、切ないですね。

 

ラストはどうなる?(ネタバレあり)


妊娠した夏子は悩んで病院に行こうとしますが、怖くなって戻ってきてしまう。そしてガードルで体の線を隠しながら、今までどおりに振る舞います。

どんなに悩んでも、夏子は美津に相談することは絶対にできません。相手が美津の彼氏であること、加えて美津が子供のできない体であることを夏子は知っているからです。

結局、美津は彼と別れを選ぶ。そして夏子とも一緒に暮らすのは無理となる。それはそうなるよなと納得できます。

夏子のお腹は大きくなります。失恋は過去ですが妊娠は現実です。臨月になった夏子は、美津の部屋で出産する。そして……。


 

 

nojirika.hateblo.jp

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それではまた。
のじれいか でした。

 


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