のじシネマ

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【映画】仮面/ペルソナ(1966)あらすじ・感想

仮面/ペルソナ

人間誰でも表面と内面は違うが、女の内面はときに女性に従い、ときに女性に刃向かう。

 

難しそうな話ですわね 

 


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作品情報

公開年度 1966年
上映時間 82分
監督 イングマール・ベイルマン(1918年-2007年)

スウェーデンの映画監督。20世紀を代表する映画監督で『野いちご』『処女の泉』『ファニーとアレクサンドル』など数多くの作品を輩出し、アカデミー賞の外国語作品賞をはじめ世界中の映画賞を受賞している。

キャスト

看護婦アルマ/ビビ・アンデーション
女優エリザベート/リヴ・ウルマン

 

ざっくりあらすじ

女優のエリザベートは突然失語症になり入院、医師の判断で看護婦アルマと医師の別荘で療養することになった。 神経質で感情を内側にこめるエリザベートと、現実的でなアルマは打ち解けて親しくなっていく。
婚約中のアルマは結婚して子供を作ることを表面的には喜び、一方エリザベートは結婚して息子がいるのだが、夫から送られてきた手紙に同封されていた息子の写真を破ってしまう。そして……。
 

どう感じたかといえば

ドッペルゲンガー(自己像幻視)の話です。
二人の女性が実は一人の女で、矛盾と闘いながら一人の人間へと帳尻を合わせていく姿が描かれています。

アルマは心の中に隠し持っていた感情や、衝動的な性行為をした過去、そんな自分の衝動的な感情に恐怖していること、結婚が決まっているが本当に子供が欲しいと願っているのかわからないことをエリザベートに酔って話します。

エリザベートはアルマの話を黙って聞き、アルマはエリザベートを姉のように慕って憧れるようになります。

人は他者と関わることで、内面の自分と矛盾が生じるのは当然のこと。
どんな人でも他人が見ている自分と自分が思う自分は違うのは当たり前です。

しかも他人は自分の内面などにさほど興味はなく、それがわかりながら他人に影響される矛盾した心理……そんなことが描かれている話でした。

 

人は矛盾の生き物なのね


またこの物語では、自分自身が抱える理性と本能の矛盾についても描かれています。
エリザベートは人から母性がないことを指摘されて好奇心と意地のようなものから軽い気持ちで妊娠し、息子をまるで愛せないことに苦しみます。

アルマも性に奔放だった過去を忘れて、結婚して母となることを楽しみであると語りながらも実はそんなに単純な気持ちでいるわけではない。

 

本性と理性は矛盾する存在。

女性の場合は、ときに女性に従い、ときに女性に刃向かいながら生きています。
もちろん男の性にはまた別の矛盾があると思います。
本当は子供を望まなくても子供を産んで育てることはかつては女性にとって当たり前だった。
そういった不自由な世の中で苦しむ女の姿についても多少触れているように感じました。

 

性は衝動的ものだから、理性や理屈で理解して、解決することは難しいことにも触れています。
生きるということは理性だけではままならず、考えれば考えるほど矛盾をが生じ、肉体と脳の双方を苦しませるとうことを考えさせられる映画でした。


それならいっそ、獣のように本能だけしか知らずに生きていた方が楽なのでしょうが、おそらくそれこそが人間のみ抱える苦しみであり、宿命なのかもしれません。


物語の大半は、失語状態のエリザベートはほとんど(まったく)喋らず、看護師のアルマだけが一方的に捲し立てています。
劇中で核になるのは、女性医師がエリザベートに、自意識で他人の目に映る自分が気になりすぎて、何を言っても嘘になるから沈黙を選んでいるのだと、エリザベートの内心をずばり読み取ってしまうシーンです。

 

ズバッとくるシーンだった 


そこでエリザベートが抱える問題はわかってしまうからこそ、それ以上の展開を期待したところ、物語はアルマの独白に繋がり、それがアルマでありエリザベート自身の独白であることがわかってきます。

モノクロの映像はときに難解で不気味な印象を漂わせますが、1966年の映画とは思えないほどスタイリッシュで美しい。

ファッションやインテリアのセンスも抜群で、さすが北欧、垢抜け方が違うといった印象でした。

イングマール・ベイルマンの映画を観たのは初めてでしたが、これを機にもっと観てみようと思います。

 

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
のじれいか でした。

 


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