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映画の感想を書いています。絶望と不条理を映画に求めてしまいがち。ときにネタバレ。

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【映画】自己嫌悪のときに見たい映画5選(ネタバレも・古い作品多め)


我ながら自分で自分が嫌になる。
そういう経験はありませんか。

もやもやして憂鬱、元気になれない。
そんなことは誰でもあると思います。

美味しいものを食べたり思いきり眠ったりするのは、元気を取り戻すために有効ですが、映画を観ることで気持ちが軽くなることもあるのかも。

今回は見てスッキリする発散できる映画ではなく、主人公の葛藤ぶりがすごい映画を観ることで感情の上書きができそうな映画を選んでみました。

主人公が抱える問題を共有することで心が軽くなれたら。
そんな気持ちで映画を観るのもたまにはいいかもしれません。

 

1 ベニスに死す 老年男が抱く少年への恋心

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概要

公開年度 1971年
上映時間 131分
監督 ルキノ・ヴィスコンティ
原作 トーマス・マン
キャスト ダーク・ボガード、 ビョルン・アンドレセン

ドイツの小説家、トーマス・マンの原作『ヴェニスに死す』(Der Tod in Venedig)をイタリアの映画監督、ルキノ・ヴィスコンティが映画化した。 

あらすじ

20世紀初頭、老年のアシェンバッハという作曲家が一人ベニスを訪れる。高級ホテルに滞在しながら宛てもない療養生活を送るつもりでいたが、同じホテルに滞在する少年タッジオに視線が釘付けになる。そして男は少年の怪しい美しさに次第に魅了されてしまうのだった。

オススメの理由

アシェンバッハは同性愛者ではなかったけれど、ホテルのレストランで家族と食事をしている少年タッジオの姿に唐突に心を奪われてしまいます。

久しぶりの恋心にアシェンバッハは心をときめかせますが、一方で相手が少年であることを男は内心で恥じてもいます。
自分の欲望に素直になれないアシュエンバッハは、挨拶もできずただ恥ずかしそうに目を伏せつつ、実は少年を目で追い続けています。

自分で自分を嘲り、少年を傍観しつ、幻想を抱いたりしながら自分を追い詰めるところに、アシェンバッハの葛藤が感じられます。

恋をしたら簡単に接触して親しくなるのが物語としてはありがちな展開ですが、この話は全く違います。
生真面目で融通の効かない男の愛情表現がイタいのですが、同時に共感もできるのです。

 

2   風と共に去りぬ 自意識過剰女の、愚かな勘違い

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概要

公開年度 1951年(アメリカ公開1939年)
上映時間 222分
監督 ヴィクター・フレミング
原作  マーガレット・ミッチェル
キャスト ヴィヴィアン・リークラーク・ゲーブル

 あらすじ

南北戦争勃発前から話は始まる。美しく若い女スカーレット・オハラは自分が狙えばどの男も思いどおりにできると本気で信じ込んでいる。
スカーレットが恋する相手は、気弱で真面目なアシュレという男だが、アシュレは別の女性と結婚してしまう。アシュレは自分を愛しているのに別の女と結婚したと信じて疑わないスカーレットは、何年もの間、別の男と結婚、死別、再婚を繰り返しながらアシュレと結ばれることを願い続け……。

オススメの理由

スカーレットは若くて美しく性格には問題があるけれど、自分の気持ちに正直で商才もある女性です。
でも彼女に決定的に欠けていたのは、他人が何を考えているかを深い思考で読み取る力でした。

だからスカーレットは自力で欲しいものを全て手に入れることができましたが、一番大切なものが何か、少し考えればわかるはずなのに、最後までわかろうとしなかったのです。

観ている側はとっくにわかっているが主人公だけが自分の本心に気づかない。
少しは葛藤しなさいよと、物事の本質から目を逸らそうとする女の愚かさに軽く苛立つ映画でもあります。

でも人は案外自分の心の癖から抜け出せないものかもしれず、ここまでではなくとも、似たようなことを無意識でやってしまっているかもしれない。

そう考えると身につまされる映画です。

 

3 青春の殺人者 この後悔はすごい

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概要

公開年度 1976年
上映時間 132分
監督 長谷川和彦
キャスト  水谷豊、原田美枝子


あらすじ 

恋人との交際を反対されて、口論の果てに勢いで両親を殺してしまった若い男、斉木順。逃げきれないと分かっていながら恋人と逃走する。
中上健次の短編小説『蛇淫』(1974年に千葉県市原市で起きた親殺し事件)をベースに制作された。

 

オススメの理由

主人公の斉木順は、元々悪人だったわけでありません。
ただ日頃から両親に仕事や進学について指示管理されて苛立ちを募らせていた。それがある瞬間、爆発したのがこの事件の発端です。
常々殺したいと思っていたのではなく、どこにでもある家族だったのです。

無論だからといって彼が取り返しのつかない罪を犯した事実は変えようもなく、そのことは本人も自覚できています。だから正気を失いそうになるほど葛藤します。

「取り返しのつかないこと」がいかに「取り返しがつかないか」をこの作品は強烈に訴えてきますし、主人公、順の立場になったと過程してみれば、自分のモヤモヤは大したことではないと安堵できる映画です。

挿入歌として流れるゴダイゴ の音楽が、若さ故の疾走する感情を際立たせています。

 

4 ダンサー・イン・ザ・ダーク 不条理の極み

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概要 

公開年度 2000年
上映時間 140分
監督  ラース・フォン・トリアー
キャスト  ビョークカトリーヌ・ドヌーヴ

 

あらすじ

1960年代、シングルマザーのセルマは工場勤務をしながら息子を育てている。
視力の弱いセルマは体力的に無理をしてでも仕事を入れ懸命に働くのだが、それには深い理由があった。

オススメの理由

この映画を観るのには本当に勇気が必要で、途中で何が起きるのか何となく予想ができるのですが、それを遥かに上回るラストに愕然としました。

好き嫌いがはっきり別れる話だと思いますが、辛いときだからこそ、勇気をもって一歩足を踏み出すのもいいかもしれません。

5 ヴィヴィアン・マイヤーを探して 孤独を貫いても自分の人生を生きること

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概要 

公開年度 2015年
上映時間 83分
監督  ジョン・マルーフ 、チャーリー・シスケル

写真家、ヴィヴィアンマイヤーの足跡を辿るドキュメンタリー映画
第87回 アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。

 
あらすじ

2007年オークションで大量のネガフィルムを買い取った男性によって彼女の才能が発掘される。撮影したのはヴィヴィアン・マイヤーという女性。どの写真も被写体に向けられた眼差しは愛に満ちた魅力的なものだった。一躍ヴィヴィアン・マイヤーは有名になるが彼女は既に故人だ。
生前は乳母として働き、長年にわたり写真を撮り続けていたヴィヴィアン・マイヤーの作品と共に、その人物像に迫るドキュメンタリー。 
 

オススメの理由

ヴィヴィアン・マイヤーという人物が、どれほど素晴らしい人物だったか称賛されることを少なからず期待していました。でも、等身大の彼女は癖のある人物で、乳母の仕事は写真撮影の時間を得るためと、学歴のなさから選択したに過ぎす、性格的にも問が多いことが浮き彫りにされます。

人と接触することを好まず、結婚もせず写真を撮り続けたのに、せっかく撮った写真を世間には発表しようとはせず保管していた。

それは世間との繋がりを避けたいが故なのかもしれないし、あれほど素晴らしい作品を撮っていても自分に自信がなかったのかもしれない。
もし彼女がもう少し若い世代の人でインターネットを使いこなせていたら、状況は変わっていたかもしれませんが、もしそうであってもこのままだったかもしれません。

誰からも評価されなくても、自分がやりたいいことをやっただけ。
色々推測できますが、何かを成し遂げられるのに、世間一般からの評価がなければ成し遂げられたと実感できない場合が多いものですが、彼女の価値観はそこにはなかったのかもしれません。
そう考えると、結局生きるうえで満たされるべきは自分自身で、外から受ける評価はその次なのかもしれない、自分の人生を生きればいいと勇気をもらえた気がします。 

 6 まとめ

癖のある映画もありますが、どれもあらゆる意味で悩みやモヤモヤを吹き飛ばしてくれた映画なのでおすすめしたいと思います。

ちなみに『ベニスに死す』で美少年を演じたビョルン・アンドレセンですが、ヴィスコンティ監督は少年の役柄をオーディションで探して旅をしたそうです。

ビョルン・アンドレセンは音楽の道に進み映画は随分出演していませんでしたが、2020年公開の『ミッドサマー』に久しぶりに出演しています。

 

それでは、また。
のじれいか でした。


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