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【映画】『胸騒ぎの恋人』失恋したときに観るべき映画としてオススメな理由

親友の男女が、2人ともギリシャ神話系美青年に一目惚れ、甘く切ない三角関係が始まった。切なく沁みるのに、ユーモアもある作品。

 

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作品情報

公開年度 2010年
上映時間 101分
監督 グサヴィエ・ドラン

『マイ・マザー』を手掛けた監督であり俳優の、グサヴィエ・ドランが監督と主演を務めたラブストーリー。(カナダ映画) 

キャスト

・フランシスグサヴィエ・ドラン
ゲイでおしゃれな青年、マリーとは親友。ニコラに一目惚れ。

 
・マリー(モリア・ショクリ)
フランシスの友人。アラサー女子。ニコラに一目惚れ。

 

・ニコラ(ニールス・シュナイダー)
ギリシャ神話系美男子。
華やかな外見で賢く明るい性格で、みんなの人気者。

ギリシャ系……

 

物語のはじまりはゲイ男子とノンケ女子

ゲイのフランシスとマリーは仲良しの友人。あるパーティーで2人の視線はニコラに釘つけになる。「タイプじゃない」と遠慮気味な2人だがフランシスもマリーもニコラに一目惚れしていた。社交的なニコラは2人からの誘いに気軽に応じ3人で遊ぶように、そしてハグをして「愛してる」と屈託なく口にするように。
ニコラの誕生日パーティには、フランシスもマリーも友人にしては高級なプレゼントを用意するのだが……。

 失恋映画としてオススメな理由

ムリめな相手に恋する切なさ

フランシスとマリーは互いへのニコラの態度に嫉妬しながら、ストレートに感情をぶつけられず表面的には笑顔、内心は悶々としています。

 特にゲイのフランシスはニコラにそのことを打ち明けていないので、自分がゲイと知って付き合っているのか、それともただの友人として接しているだけなのか悩みます。

敢えて気づかないフリをしているのか、ニコラ自身もゲイなのか、もしくはバイセクなのかもと取れる態度でフランシスとマリーの2人を惑わせていきます。

 

ムリめな相手なんてやめとけばいいのに。手が届くとことでよしとしましょ 


一度ニコラがマリーに向かって「2人とも愛してる」と軽く口にすると、「自分は冗談だってわかってるからいいけれど、フランシスは本気にするかもしれない」とフランシスがゲイであることを匂わせたのか、それとも友情からか微妙な言葉を残します。

この物語の面白いところは、マリーは自分が女だから、この恋がフランシスより有利だとは全く思ってはおらず、むしろニコラがゲイであった場合は一巻の終わりだと真剣に駆け引きをしているところ。

一方、フランシスもニコラがストレートだったら出る幕はないので、マリーにハグする前で切なそうに視線を逸らします。

このゲイのフランシスとストレートのマリーが友人として支え合えるのは、2人には似た心の闇があるからで、それはニコラのように誰とでも簡単に親しくなれる人間(人たらし)には到底理解できないデリケートな感情のはずです。

そんな2人にとってニコラは輝かしく憧れの存在なのでしょうが、残念ながらニコラはフランシスとマリーに対して遊び友達以上の感情は持ち合わせていなかった。
軽い気持ちで2人をからかっただけで、フランシスがゲイだろうがバイだろうが、マリーがストレートだろうがどうだってよかった。
だから2人から恋愛感情を持たれていると知らされた時点で(ニコラ本人は薄々察しつつも)関係は終了してしまいます。

恋愛の始まりは相手への好奇心ですが、ニコラは遊び相手としてフランシスとマリーを「愛している」だけで、ニコラが自分に好奇心を持っていないことはフランシスもマリーも薄々勘付き「ムリめな相手」と知りながらも、じたばたしてしまうのが切ない。
失恋映画としてはなかなかリアルで、身につまされれるところがあると思います。

抑えて抑えて結局爆発!そして後悔

それだけムリな相手なら、深入りせずに心理的にも距離を置き、友人と接していれば長続きしそうですが、敢えて彼らは自滅へと突き進んでしまいます。

その結果、決定的なことを口にされてしまうのですが。

おそらくフランシスもマリーもフラれるとわかっていて、その通りになってしまった。
これぞ恋愛における自滅的行為というやつですが、もうどうにも打ち明けざるを得ない2人の切ない恋心が伝わってきます。

逃した魚(逃げた)は「よく見れば小さい」ことがほとんど

最初は嘆き悲しむフランシスとマリーですが、時間の経過とともにニコラへの想いを冷静に受け止めるれられるようになります。
失恋に大切なのは時間だよと教えてくれているやさしい映画でもあります。

またインタビュー形式で、失恋を語る男女が登場するのですが、彼らの「恋の終わりをどこで感じる」か、「別れについて」淡々と語るところは、なかなか生っぽくて肯けるところが多いと思いました。

さいごに おすすめポイント

男女の切ない恋心が丁寧に描かれています。
共感できる部分が多く、登場人物の3人が魅力的で個性に溢れているところもオススメのポイントです。
特に2人を悶絶させる、ニコラ役のニールス・シュナイダーは、観ている側も悶絶させるエロかっこよさです。

台詞で語り過ぎず、視線や行動で片思いのいじらしさを訴えてくる、秀逸な作品だと思いました。
設定でもフランシスもマリーもそれぞれセックスをする相手はいるとしたところで、ニコラへの感情は精神的な恋心であること、またそれゆえの厄介さが上手に描かれてます。

恋人と別れたとき、失恋したときに観る映画として強力にオススメできる作品です。

モテる立場だってツラいこともある。
だからニコラが一方的に加害者というわけじゃないのかもしれない。

でもニコラの友人だったら言ってしまいそう。

モテる男はツラいけど、相手を傷つけることには敏感になった方がいい。いつかきっと自分が棄てられるときがくるから。 



それではまた。
のじれいか でした。


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