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【映画】ローガンラッキー あらすじと感想 ゆるいコメディー感がよし(誰も傷つかない)

怪我で選手生命を絶たれた元フットボール選手の兄ジミーと、
イラク戦争で左腕を失ったバーテンダーの弟クライド。

周囲から「呪われたローガン兄弟」と眉を潜められ、嘲笑される二人。

そんな2人はある日一攫千金を手にする計画を思いつく。

ローガン兄弟は、ラッキーを手に入れることができるのか?

 

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作品情報

公開年度 2017年
上映時間 119分
監督 スティーブン・ソダーバーグ

映画のジャンルとしては「クライムアクション映画」であるとか「アクションコメディ映画」に区分される作品だと思います。
でも、これはもう「コメディ映画」と呼んでしまってオッケーではないかと。

スティーブン・ソダーバーグといえば26歳の若さで『セックスと嘘とビデオテープ』を初の長編作品として世に送り出し、カンヌ映画祭にてパルムドールを受賞しています。

オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』でも有名ですが、SFの『ソラリス』『インソムニア』や、チェ・ゲバラの半生を描いた『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳別れの手紙』などの自伝的映画なども手掛ける、マルチな才能を持つ映画監督です。

チェゲバラもそうなんだ。

 

おもなキャスト

ジミー・ローガンチャニング・テイタム)ローガン家の長男。右足の怪我でフットボール選手への道を断念。建設作業員として働くも足を理由に解雇される。離婚した元妻との間にいる娘とは適宜会うことができるが、妻の再婚相手の仕事の関係で転居することを聞かれ焦る。

クライド・ローガンアダム・ドライバーイラク戦争で左腕を失い、バーテンダーとして働く。

メリー・ローガンライリー・キーオ)美容師。ローガンの末の妹、車に詳しい。

ジョー・バングダニエル・クレイグ)服役中の金庫破り。体は鍛えている。

 

 簡単なあらすじ

ローガン家の長男ジミーはノースカロライナ州のシャーロット・モータースピードウェイで働く建設作業員だが足を引きずっているのを理由に解雇される。追い討ちをかけるように、近所に暮らすジミーの元妻と娘が再婚相手の仕事の都合でリンチバーグ(遠方!)へ越すことが決まる。
ジミーの弟クライドはイラク戦争で左腕を失い、安物の義手をつけてバーテンダーとして働いているが、客に腕を嘲笑されて怒った兄弟は子供のときのような悪さを思いつく……。

 

ローガン兄弟はやってくれる

ローガン兄弟は不運で哀れな兄弟だと周囲から憐れみ半分からかわれている存在で、ジミーもクラウドも渋々そのことを受け入れています。


ですがクライドの店に客として店を訪れたレースチームオーナーのマックスとその取り巻きがクライドの腕を嘲笑するのを見たジミーは怒りを爆発させます。

 

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「カリフラワー!!」

それはローガン兄弟が悪さをするとき、何かが始まるときジョーが発する合言葉でした。



ジミーは以前シャーロット・モータースピードウェイで働いていた知識を生かして、レース観客たちが落とす現金が輸送管ダクトを通って金庫に一括されることを知り、その現金を頂戴しようと計画します。


仕事をすぐにクビになってしまうジミーでしたが、シャーロット・モータースピードウェイで働いている意味がここでわかってくる流れです。


けれどかなり大掛かりな仕事になるため、ローガン兄弟は2人でやり遂げられる計画ではありません。

 

そこでローガン兄弟は、モンロー刑務所に服役中の伝説の金庫破りジョー・バングに会いに行きます。
あと半年で刑期を終えるジョーなのですが、ジミーは金庫破りのためだけに脱獄してまた刑務所に戻るという、あり得ない提案を持ちかけます。

ローガン兄弟はジョー・バングと、兄弟の末妹のメリー、ジョー・バングの間抜けな弟二人を手伝いに加えて計画を実行へと移すのです。


映画『ローガン・ラッキー』予告(30秒)

 

おかしな面子が笑いの要素

クライドはわざと自動車事故を起こして懲役90日の実刑を受け、ジョーのいるモンロー刑務所に送還。

一方ジミーは医療提供活動をする高校時代の後輩シルヴィアと再会するなど、出会いもあります。

順調に進んでると思われた計画でしたが、決行日を早める必要に迫られます。
しかも決行日は「コカコーラ600」の開催日。
もっとも外した方がいい日に犯行は決行されることに。

ばたばたしている連中は、より一層ばたばたと騒がしくなっていきます。

現金を盗み出す様子も、本人たちは真剣なのですが、見ている方はやはりおかしい。

狙っているのはわかるんですけれどね。 

感想・一言でいえば「緩いオーシャン」

兄弟だけでも面白いのですが、メンバーをプラスしていることで彩りが加わり華やかに、緩いオーシャンシリーズみたいなよい雰囲気です。

極端な話、ストーリーがなくても空気感だけでも楽しむことができると思います。

ストーリー的なことを言えば、兄弟が完璧ではなく肉体的にも精神的にも枷を追わせたことで、自由になろうと犯罪(実は犯罪ではくてもよいのかも)へと挑ませる心理が巧みに描かれていると感じました。

通常こういった設定にするとシリアスになってしまい、笑えない話になりがちですが、不思議と悲壮感はなく安心して笑えるところが素敵です。

見ていて不安さはないのにテンポもよく面白い映画です。

またクライム映画の結末は犯罪が成功するか否かがストーリーの 、本作は結果もさることながら、そこに至る展開がまったく予想がつかないので見ていて引き込まれます。

加えて前半に起きた出来事や出会った人たちが、すべて結果では回収されていくのでモヤモヤは残りません。
こういう後味すっきり映画、いいですね。 

ジミー・ローガンを演じたチャニング・テイタム

『G,Iジョー』やソダバーグ監督で男性ストリッパーの恋を描いた『マジック・マイク』では主演を勤めている俳優です。

クライド・ローガンを演じたアダム・ドライバー

ご存知『スターウォーズ』シリーズのカイロ・レン役で有名。『パターソン』のような淡々とした役柄も素敵でした。遠藤周作原作、マーティンスコセッシ監督の『沈黙ーサイレンスー』ではシリアスな役柄を演じています。

ローガンの妹を演じたライリー・キーオのお母さんはリサマリープレスリー

つまりおじいさんはエルビス・プレスリーということに。
エルビスといえば、ビートルズが憧れ尊敬するほどの大スターなので、ライリーは超がつくサラブレッドということに。

女優としては、女性ロックバンドの栄光と挫折を描いた『ランナウェイズ』(2010)でデビューした後、順調にキャリアを積んでいますよね。

ジョー・バングを演じたダニエル・クレイグといえばご存知『007』

本作では金庫破りの役ですが、サスペンスの映画のドリームハウス』や、ミステリー映画の『ドラゴンタトゥーの女』でも有名な俳優。
ちなみにレイチェル・ワイズと結婚してるんですね。(知りませんでした)  

ジョンデンバーの音楽♪

劇中冒頭でジミーが娘の前で口ずさむ、ジョン・デンバー(1943年–1997年)は1970年代を代表するアメリカのフォーク歌手です。『カントリー・ロード』はあまりにも有名で、ジブリ映画の『耳をすませば』でも挿入歌になっていたと思います。爽やかでとてもよい曲ですが、アメリカ人にとっては郷愁を誘う特別な意味を持つ曲なのでしょう。

この作品でも、ジミーの娘が最初はリアーナを歌うと言っていたのに、父に向かって『故郷に帰りたい』と歌うところは切なくて悲しい。

両親の離婚を頭では理解しているけれど、自分にとっての父親はジミーひとりで、そのことを
忘れずにいたいと願う子供ながらもしっかりとした愛情を表現するシーンでした。
 

「コカコーラ600」とは?

車やレースに詳しい方は知っているかもしれませんが、毎年シャーロットスピードウェイで開催されている超有名なストックカーレース(モンスターエナジーNASCARカップ・シリーズ)で、200万から500万の人が訪れるそうです。
いくら工事が終わってしまうからとはいえ、あり得ない大胆な行動をするローガン兄弟の大胆かつアホさ加減がこういう背景からも見えてきます。

それではまた!
のじれいか でした。


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