【映画】『パッチ・オブ・フォグ ー偽りの友人ー 』あらすじ・感想 「無理無理やってる友だちごっこ」
パッチ・オブ・フォグ ー偽りの友人ー
一言でいえばこんな話
「万引き癖のある作家と、それを見つけた警備員が、
無理やり友達みたいに付き合おうとする話」
原題は『A Patch of Fog』。サンディの著書の題名 「一面の霧」。
イギリスの映画だね。
作品情報
公開年度 2015年
上映時間 92分
監督 マイケル・レノックス
キャスト
サンディ・ダフィー/大学教授で作家の有名人 (コンリース・ヒル)
ロバート/スーパーの警備係 (スティーヴン・グレアム)
ルーシー/TV局のインタビュアー (ララ・パルヴァー)
あらすじ
25年前発表した小説「A Patch of Fog」がベストセラーになったサンディ・ダフィーは作家で大学教授、テレビ番組にも出演する有名人。
インタビュアーのルーシーは恋人で公私ともに充実しているはずのサンディだが、最近、引退を口にするようになっている。
実はサンディには万引きの癖がある。ある日サンディがスーパーで万引きしたのを警備員のロバートに見つかってしまう。
警察に報せないでほしいと懇願するサンディに、ロバートは外の店へと誘うのだった。
感想・地味な映画で2人の男の心理が描かれる
ジャンルとしてはサスペンス、ホラーに分けられていますが、ヒューマンドラマの方が合っているように思えます。
登場人物も地味で派手さはありませんが、心理戦を楽しめる映画です。
このドラマの重要な人物は、サンディとロバートの2人だけ。
2人のキャラクターについて考察してみます。
登場人物について
「サンディ」
社会的に成功しているインテリですが、ずんぐりとして見た目はパッとしない。
そのぶん妙な親近感はある地味なおじさんです。
立派な家に住んでいい暮らしをしているのに、心にトラウマがあるからと万引きを繰り返す情けない男でもあります。
その心の奥には、子供の頃、親が広場恐怖症で家から出られなかったため、自分は6歳のとき霧の中で迷子になったトラウマがありました。
そのときのことを小説にしたのが「A Patch of Fog」(一面の霧)。
でも、サンディは立派なおじんさんだし、そんな昔の過去からはいい加減立ち直った方がいいと観ていて少しうんざりもします。
登場人物について
「ロバート」
スーパーの裏側でモニターを眺めながら、万引き犯を見つけ出しては警察に突き出すのが仕事。
帰宅後は一人の部屋でテレビを見ながら、ペットの蛇に餌を与えるのを日課としています。
機械に強くて用心深い性格ですが、これまでの孤独な生活から逃げ出したくてたまらない。そこにサンディが万引き犯として登場、獲物になってしまいます。
教養のないロバートは、最初万引き犯として捕まえた男が有名人であることを知りません。
ですがサンディが自分を有名人であることを打ち明けたことで、ロバートの好奇心が刺激されるのです。
だからロバートはサンディに万引きを見逃した対価として金銭を要求せず、驚くことに友情を要求する。
これまで友だちがいた経験のないロバートは、急激にサンディと交流したがりますが、サンディは怯えて気味悪がるばかり。
最初は無欲なように思えますが、ロバートのサンディに対する感情は友情を超えて執着へとエスカレートしていきます。
秘密を共有しても友情は育まれない
孤独な中年おじさんロバートが、有名人の中年おじさんサンディの弱みを握り、それを餌に友情を得ようとにじり寄るキモい話です。
ロバートは、万引きの常習犯のサンディが現行犯をはたらく姿を録画したディスクを持っていることを餌に友情を得ようとします。
よくあるストーカーの話と違うのは、孤独なおじさんロバートは、サンディが有名人だということを知らなかったことでしょうか。
ロバートは友情をサンディに望みますが、それほど純粋なだけではなく、あれこれサンディのことを探り、秘密を握ることに躍起になります。
それに腹を立てたサンディはロバートの家に侵入してディスクを処分して関係を断ち切ろうとします。
縁が切れて元気を取り戻していたサンディでしたが、狡猾で用心深いロバートは自宅に録画装置をしかけていて、サンディが自宅に忍び込み破壊する姿を録画していたのです。
そして、ロバートは自棄になって、自ら列車に飛び込もうとします。
力づくで止めるサンディに感動するロバート。
でもサンディがロバートを助けたのは、人道的な理由と動画の在り処がわからないという理由からで、ロバートを愛していたわけではありません。
ロバートはサンディの唯一無二の相手になりたくて、サンディの秘密を必死に探ります。
秘密を共有して、もっともっと深い関係になりたいと思っているから。
でもそれはサンディからすれば迷惑でしかないのですが。
見所とおすすめ
ゲイでもない男が男にストーキング行為をする。
実は2人ともそれぞれ心に闇を持っていて、年齢の割に幼稚な男。
その2人が心理が見所としてあげられると思います。
ロバートのサンディへの執着
ロバートは暇な中男ですが、しつこく同性の友人に拘り続けられる異常性が逆にコメディのようにも思えてきます。
しかもサンディは女が見ても別に魅力的でもない太ったおじさんです。
何がよいのかわかりませんが、執着は自分で作り上げた価値観から始まるものなのでしょうか。
シンディはロバートに迷惑心しか持っていませんが、この世から消し去ってしまいたいと思っても計画的な行為にまでは及ばない。
あらゆる意味で常識的であり、小心者でもあります。
どこでどうやって関係が破壊するか
2人のニセの友人関係が、どういう形でどのようにして壊れるかも見所です。
このタイプの映画はだいたいそうですが、相手をギリギリまで追い込み、どこでどうやって頂点を迎えて爆発させるかが面白いところです。
バットエンド好きにおすすめ
ラストはあっけなく救いがありません。
バットエンドが好きな人は楽しめる映画かもしれません。
それではまた。
のじれいか でした。