【映画】5%の奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生 【あらすじ、感想など】シンプルにハッピーでいい★★★
『5%の奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生』はドイツの映画。
ミュンヘンの5つ星ホテルを舞台にした、実話を元に描かれた作品です。
作品情報・キャスト
公開年度 2018年公開
上映時間 111分
監督 マルク・ローテムント
キャスト コスティア・ウルマン、 ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、クラインシュミット ヨハン・フォン・ビューロー、ミヒャエル・A・グリム
『5%の奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生』一言で言えばこんな話
ホテルマンを夢見た青年が視力の95%を失ったが、そのことを隠してホテルに入社してホテル研修をやり遂げる話。
テーマ
努力と周囲からの愛があれば夢は叶う、かもしれない
ログライン
網膜剥離で視力障がいを持つ男が、障がいを隠して高級ホテルの研修を受ける日々の奮闘と支える仲間との友情。
はじめに
ドイツ在住でスリランカ人の父、ドイツ人の母を持つ青年サリー(コスティア・ウルマン)は、高校の成績も優秀で将来はホテルマンを夢見ている。だが突然、サリーは先天性の目の病にかかっていることがわかり、視力は通常の5パーセントしか残らなかった。サリーは、ホテルマンへの夢を捨てきれず書類を送るがどれも不採用。
そんなときミュンヘンの5つ星ホテルへの採用が決定する。だがそれは視力のことを隠しての合格だった。
ホテルの研修期間に得たもの
偽りの願書を送ったところ合格してしまい、ホテルでの研修中が始まってしまいます。
サリーの視力になった景色が時折出てくるのですが、これで仕事をするのはかなり危険で見ている側がハラハラしてしまいます。
客室清掃で鏡の汚れに気づかないサリーは、同僚のマックス(ヤコブ・マッチェンツ)に事情を訊かれたサリーは素直に目のことを打ち明けます。
マックスは誰にも話さないことを誓い、サリーをサポート。
サリーとマックスは仲良くなり、マックスはサリーに色々と力を貸すようになります。
キッチンで残飯の処理をしていたとき、サリーの異変に気づいた皿洗いのハミード(キダ・コードル・ラマダン)もサリーに力を貸し、互いに助け合う関係になる。
最終的には料理長(ミヒャエル・A・グリム)もサリーの目に気づくが、それを知った上でサリーを指導する。
友人関係に恵まれたサリーはハラハラしながらも、どうにか日々をこなしていきます。
それは美しい友情ではあるのですが、やはり観ていてハラハラします。
そういう意味ではかなりスリリングでもあります。
やがてホテルに納品に訪れる野菜農家のラウラ(アンナ・マリア・ミューエ)の声に惹かれたサリーは、少しづつラウラと親しくなりデートをするようになるのですが、ラウラに対しては目のことを打ち明けられません。
バーの研修では事前にマックスから指導を受けてドリンクをつくれるようになっていたサリーですが、支配人のクラインシュミット(ヨハン・フォン・ビューロー)の評価は厳しく、繰り返しグラスの洗い直しを言い付けられたサリーは、3度受けたらクビになる警告の1度目を受けてしまうのでした。
落ちるところまで落ちれば
レストランでの研修の初日に遅刻をしてしまったサリーは、支配人から2度目の警告を受けてしまう。
落ち込むサリーの元に母と姉が現れ、父がスリランカに戻って別の女性と結婚してしまったことを告げる。
銀行口座の現金を全て持ち去られ、実家は家のローン返済にも困るように。
そのためサリーは母(ジルヴァーナ・クラパッチュ)の就職が決まるまで仕送りすることになるのです。
母と妹はサリーを愛しているしやさしいのですが、もう既に相当無理をしているサリーをさらに追い込むことになるとわかっていて、なぜサリーからの仕送りを期待するのか疑問は残ります。
そして、職場とアルバイト、ラウラとの時間で限界を超えたサリーは、多忙な体と心の拠り所を薬に求めるようになるのです。
ラウラの息子と公園で預かっていたとき、ホテルで結婚式の勤務が入っているのを忘れたことに気づき慌てたサリーはその動揺で目のことがラウラにバレてしまいます。
怒って帰ってしまうラウラ。
これはサリーが気の毒すぎるシーンでした。
動揺したままホテルに向かい結婚式の給仕をするサリーですが、精神的に限界を超えていたのでしょう、トレーを持ったまま足を滑らせ転倒。
マックスの助言も聞かず仕事を続けるものの、支配人から追い出されてしまいます。
自暴自棄になるサリーは階段から転倒して病院に搬送。
サリーはホテル勤務を諦めて別の職場を探ることにします。
落ちるところまで落ちたサリー。
マックスはサリーを誘いマウンテンバイクで山を下ることでサリーの心は癒されていくのです。
やり遂げることで未来は見えてくる
元気を取り戻したサリーは支配人に障がいを隠していたことを詫び、修了試験を受けさせてほしいと頼みます。
研修の合格試験を勝ち取るために。
愛とやる気があれば何とかなる
映像がきれいな作品でした。
5つ星ホテルを舞台にしているので華やかなシーンが楽しめます。
辛いシーンもありますが、全体を通して画面は明るく、ヨーロッパ映画というより、ハリウッド映画のような軽快な雰囲気があります。
ストーリーはハッピーエンドですが、そこに到るまでには予想したとおり、かなりのハラハラ感が伴います。
目を覆いたくなるような場面もでてきますが、そこも見所の一つかもしれません。
現実的に考えてみれば、やりたいことが肉体的に困難だとわかりながら最後までやり遂げることは並大抵のことではないはずです。
強度の弱視というハンデを背負い、ホテルで接客の勤務をすることは、どう考えても無茶な選択なのだから。
何もわざわざ不得意な職種を選ばずともサリーのように優秀なら、違う場所で才能を開花できるのにと考えてしまうのは消極的過ぎでしょうか。
この話はある種のサクセスストーリーですが、一人でどれほど頑張っても限界があるため、そこに手を差し伸べる多くの善意が登場します。
だから自分がそこにいるような気持ちになれて、心が浄化されるような体験ができると思います。
主人公のサリーは強情で弱い部分を持っているけれど、基本的には気のいい努力家で真面目なやつです。
少なくても同僚を陥れて自分だけがいい成績を取ってやろうなんてブラックな感情は微塵もないし、それは友人のマックスも同じ。
だから助け合うことができたのでしょう。
ただ、世の中がサリーの周囲みたいに善意で出来ていれば幸せなのでしょうが、なかなかそうはいかないのが現実です。
満員電車の中で足がどうだの、肩がどうだので喧嘩を始めたり、職場の些細な苛めなど邪悪な感情が渦巻いている環境に身を置く人(黒く染まっている人)は、こういう映画を観て一時でも善良なハートを取り戻した方がいいかもしれない。
もし善良なハートの持ち主であれば「頑張ればやっぱりハッピーになれる!」と希望が持てる終わり方にもなっています。
この映画は実話に基づいた映画ですが、主人公の悲しみや努力というより、シンプルに愛を伝えようとした映画なのかもしれません。
それでは、また。
のじれいか でした。