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【映画】ぼくは明日、昨日のきみとデートする その意味を検証

ぼくは明日、昨日のきみとデートする
京都を舞台にした20歳の男女の恋のお話。

 


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作品情報・キャスト

公開年度 2016年
上映時間 110分
監督 三木孝浩
原作 七月隆文
キャスト 福士蒼汰小松菜奈東出昌大


原作は2014年に出版されて100万部の大ヒットになった書き下ろし小説。
2016年、映画の公開前には大谷紀子により漫画版も出版されている。

 

イントロダクション

京都の美大生に通う20歳の南山高寿は、通学途中の電車内で同世代の女の子に一目惚れをする。「勘弁してくれよ」戸惑う高寿だが、もし同じ駅で彼女が降りれば声をかけようと決意する。
すると彼女が同じ駅で下車、勇気を振り絞って高寿は声をかけた。
「一目惚れしました」彼女の名前は福寿愛美、20歳の美容学校生。
「またね」愛美はどうしてか、涙ぐみながら手を振った。

 

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高寿と愛美は以前も会っていた?

初対面の翌日、高寿が動物園でデッサンをしているところに愛美は現れます。
どうして自分がここにいることがわかったのか不思議に思いつつ再会を喜ぶ高寿。
そしてふたりは磁石が引き合うように、すぐに親しくなり恋人同士になります。
この辺りまではよくある恋愛ストーリーなのですが、段々と様子がおかしくなって行きます。

ある日、愛美が忘れたノートを見た高寿を見て首を傾げます。
そのノートには「未来のこと」が克明に綴られていたから。


高寿が不審に思い尋ねると、愛美は信じられない告白する。
「私は別の世界から来たの、あなたにとっての未来は、私にとっての過去」

幸せな日々が続くと思っていた高寿は衝撃を受けるのです。

パラレルワールドの接点の時間で出会う2人

愛美の手帳にはこれまで2人が会って行動したことが書き残されていて、「私たちが辿ってきて、これから辿っていく運命をきちんと過ごしたい」と愛美は高寿に打ち明けます。

2人は違う世界の住民。
以下のような関係でした。

・愛美と高寿は別の次元で生きているパラレルワールドの住民
・2つの世界は同じ速度だが、時間軸は逆行。
・2つの世界は5年に一度、30日間だけ交わり、また離れていく。
・高寿にとって最初の出来事が、愛美にとっては最後の出来事になる。

20歳の愛美と高寿はこれまで何度か会っています。
愛美が35歳のときは高寿は5歳。
このとき宝ヶ池で溺れかかった高寿は女性に助けられますが5歳の高寿を助けたのは35歳の愛美でした。
また、同じように愛美も5歳のときに35歳の高寿に火事の際助けられています。

端と端を結んだ線になってひとつに繋がっている

長い時間軸を通すと5年ごとに出会っているわけですが、今回20歳の時間を過ごすにあたって、愛美は高寿の世界にいても1人時間が遡っていることになります。
だから1日ごとに高寿から離れていくことになるのです。

愛美は2人の時間を楽しく過ごすために、高寿の時間に合わせることができるように、高寿にとって最後の日に2人の思い出を克明に聞き出してそれをメモに残します。
そしてそのとおりに時間を過ごす。
だから愛美がつくったビーフシチューには高寿の実家で作るチョコレートが入っていて、そのとき撮った写真を箱に入れて取ってありました。

感想、気になった点(小説との違い) 

最初に小説を読んでいたのですが、この複雑なパラレルワールドの法則をわかりやすく(黒板にさりげなく図解入り)説明がしてあり、映像の方が向いている話だと思いました。

映画と小説は細かい設定が違います。
一緒にいられるのは映画では30日ですが小説だと40日。

原作では最初愛美は家族旅行で高寿の世界を訪れ、そこで2人は知り合う流れでした。
設定はたぶんその方がわかりやすいと思います。
高寿の世界を愛美が訪ねているとした方が、時の流れは高寿のままで愛美だけが時間を逆行していることがわかりやすい気がするからです。

また高寿と愛美はお互い20歳でここで出会う前に、5年ごと出会っていた内容は原作の方が詳しく触れていました。

小説は軽いタッチですごく読みやすいのですが、登場人物が映画のイメージより幼い印象を受けました。設定からみれば映画の人物設定の方が大人びているように感じました。

時間が逆行しているので、2人はいずれ(30日後に)すれ違い別れてしまう運命。
なのでこの話は正確にいえば、恋愛ドラマというよりはSFファンタジー作品といった感じです。


設定には無理があるというか、あたらめて考えてみると混乱することも。
前進する2台の電車がすれ違っていく感じが近いかもしれません。

筒井康隆の『時をかける少女』も、結ばれない男女の切なさを描いており、切なさの質は同じですが、こちらはパラレルワールドなので世界観はちょっと複雑です。

 

nojirika.hateblo.jp

作家は誰でも話を作るとき、どうしたら悲しくできるだろう、誰にとっても切ない話をつくるために思い悩み苦悩するのでしょう。
この話を考えつき「どうだむっちゃ切ないだろうー、オラオラ〜!」となった作家の七月隆文先生のドヤ顔が見えるようです。

20歳で出会う接点が、恋愛対象の男女として会える唯一の時間。
5年単位で会えるので、高寿が10歳のとき30歳の愛美と、15歳の愛美と25歳の高寿も出てきます。

人生はまだこれからなのに、運命の相手との恋愛を、20歳の30日間しか経験できないのは切ないことです。
 

違う世界の住民同士の高寿と愛美の若い2人は、恋をしてやがて運命を受け入れ、わずかな時間を思い出に昇華させるための時間を過ごします。
そのことは悲しいけれど、長い人生のなかの30日はいずれ美しい思い出になっていく。箱にしまってあった思い出の写真やメモのように。そのことが愛美にはわかっている、やはり女性の方が現実的なのですね。

時間は取り戻せないし、永遠の時間はどんな2人にも存在しないということをこの物語は教えてくれます。

 

あとラストの京都の何気ない日常の風景に流れるスピッツ『ハッピーエンド』が素晴らしく泣かせてくれます。
京都という場所設定も現実離れした美しい恋物語には合っていると思いました。
東京だとこんなに幻想的にはならないでしょうから。

 

最後に「一目惚れしました」っていいですね、直球で羨ましい。
そんなこと言われたことありますか?

 

それでは。
のじれいか でした。



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