【映画】エリザベスタウン 悪いことは続いても、悪いことばかりじゃない
タイトルは、主人公のお父さんの故郷の街
ざっくり言うとこんな話
「仕事の大失敗で職を追われた男が、急逝した父の葬儀に出席するため旅に出る話」
作品情報・キャスト
公開年度 2005年
上映時間 123分
監督・脚本
キャメロン・クロウ
キャスト
ドリュー/オーランド・ブルーム
クレア/キルスティン・ダンスト
ドリューの母/スーザン・サランドン
社長/アレックス・ゴールドウィン
簡単なあらすじ
シューズメーカーの人気デザイナー ドリューはこれまですべてが上手くいっていたが、仕事で約10億ドルの大損出を負わせる大失敗をする。会社は倒産寸前に追い込まれドリューは社長からクビを言い渡される。死を決意したドリューの元にエリザベスタウンを訪れていた父の訃報が入る。母は夫の急死に混乱。長男のドリューが一人現地へ向かう飛行機内で、ドリューはキャビンアテンダントのクレアと出会うのだが……。
感想など
オーランドブルーム演じる、10億ドル(!?)の損失を与えたシューズデザイナー、ドリューは死の寸前に父親の突然死を知らされます。
自分のことだけでも大変で何も考えられない状態のはずなのに、淡々と振る舞うドリューの姿に、冷静な人柄がよく出ていました。
話の本筋ではありませんが、靴で10億ドルってどれだけやらかしたんでしょう。
資産管理部門でもないのにデザイナーのいち社員の失敗でそこまで損失が出るとは、どれだけ仕事を任せきりにしていたのだろうとツッコミを入れたくなりました。
「裸足でいた方がまし」と称されたシューズらしいですが、逆に失敗作を見てみたくなります。
ドリューが一人父の故郷、エリザベスタウンに着いたとき、歓迎されながらも何とも言えない違和感を感じる気持ちは日本人にもよくある感情だと思います。
特にドリューの両親はかつて結婚前に反対されていたので、息子のドリューにとって父方の親戚は余計に未知の集団というのも普通に頷けます。
結婚に反対されていたのもありますが、結婚相手の実家が苦手な妻というのも普通によくある話なので、アメリカでも似たようなことはあるんだなと共感できました。
ありないけれどあったら嬉しい出会い
エリザベスタウンに向かう飛行機の乗客と乗務員としてドリューとクレアと出会い、ガラガラに空いている飛行機の中で雑談をしたがるクレアでしたが、ドリューはクレアに全く関心を示そうとしません。
それは当たり前のことですが、どうやら気を遣っているらしいクレアが空回り状態で話続けるところは気の毒にも思えます。
父の葬儀のために死を保留にしている状態なので、(帰ったら死ぬつもりでいる)新しい出会いに浮き足立っている場合でもないわけです。
でもそんな自然でありがちな出会いが、ストーリーを逆に面白くさせていきます。
死にたいほどの状況なとき、素敵な相手が親しげに近寄ってくれてグイグイとアプローチしてくれ、こちらが困惑したら少し後退りながら気にかけてくれている。
まさに理想的な相手であり、理想的な出会い方です。
そんな夢みたいな出会いは誰もが望むところですが、ありがちだけど滅多にない。
多くの人にとっては幻想に過ぎません。
世の中は他人行儀で、自分がいなくても平気で回っている。
現実はそんなものなのですが、でもほんの少し勇気を出せばその先に本当の愛があるかもしれない。
誰かにとって風景の一部でしかない自分という存在でも、自分にとっては唯一無二だということをなぜか感じさせてくれる映画でした。
キャメロン・クロウ監督は観ている人を場所に置いていかないところが好きです。
一緒に連れて行ってくれる感覚がします。
あら、いいこと言うわね
監督はキャメロン・クロウ 元妻は?
『バニラスカイ」や『あの頃ペニーレインと』(アカデミー賞脚本賞を受賞)などで有名な監督ですが、彼自身ミュージシャンなだけあって、本作品でも音楽や映像のキャメロン・クロウの世界観を楽しむことができます。
ロックバンド「ハート」のナンシー・ウイルソンと結婚していたこともあったとか。
脚本もキャメロン・クロウが担当、台詞も共感力が高くて好き。
「このドレス縁起が悪いの」
お洒落でよく似合うドレスを褒められたクレアは笑って答えます。
そういう気持ちはよくわかるのですが、男性のキャメロンが書いた台詞だと思うとよく言えばなかなか繊細で、別の言い方をすればちょっと面倒なやつという印象も残ります。
マニック・ピクシー・ドリーム・ガール
若きオーランド・ブルームとキルスティン・ダンストが爽やかで本当に素敵です。
しかしキルスティンは変わらないですね。
このときは本当に輝いていますが、今でも美人というのとは少し違うように思えるのですが独特の陰をまとっているというか、簡単に真似できない個性を持っている女性だと思います。
今回キルスティンが演じたクレアみたいな女の子のことを、マニック・ピクシー・ドリーム・ガールと呼ぶらしいです。
この作品を観た映画評論家が思いついた言葉らしいです。
≫マニック・ピクシー・ドリーム・ガール - Wikipedia
妙に堂々とした振る舞いで、主人公を振り回す女子の役。
日本でいえばラノベのヒロイン的な存在でしょうか。
自身ありげに振る舞うし、一見して鈍感そうだけれど、実は謎が多くて繊細だし傷つくことに敏感。
だから好きな相手の内面に目を向けられるのでしょう。
そして最後に旅を終えてドリューは
エリザベスタウンで父の葬儀を終えたドリュー。
心はクレアに向いていましたが、一人になるために車で旅に出かけます。
クレアが用意してくれたノートに従って景色を眺め、おすすめのダイナー料理を食べて旅を続けるドリュー。
旅の終から戻りクレアと再開したドリューは思います。
「無難なものだけを求めるものに本当の大失敗は起こらない」
そして、本当に大切なことは愛する者と出会うことであり、自分の遺伝子を繋げていくこと、結局生きる者が生命の危険を犯しても決行すべき行為はただ愛だと気づくのです。
人間も動物ですからね、シンプルに生きればいいんです。
本当にいい話でした。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
のじれいか でした。
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