のじシネマ

映画の感想を書いています。絶望と不条理を映画に求めてしまいがち。ときにネタバレ。

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【映画】いつかギラギラする日 人間は完全に自由でない限り夜ごと夢を見続けるだろう

いつかギラギラする日

 

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 強盗(ギャング)らが現金輸送車から奪い取った5000万の現金を巡って、仲間割れして殺し合いをする話。

作品情報

公開年度 1992年 
上映時間 108分
監督 深作欣二
製作 奥山和由
脚本 丸山昇一

キャストと役柄

萩原健一神崎 ギャング   
木村一八角町 ライブハウスのオーナー
多岐川裕美/美里 神崎の恋人(ハウスキーパー) 
荻野目慶子/麻衣 柴の愛人、角町とも関係している
石橋蓮司井村 ギャング、借金を抱えていて大変 
千葉真一 ギャングの一因、札幌で麻衣と暮らしている

樹木希林 井村(石橋蓮司)の妻
八名信夫 ヤクザの組長
原田芳雄 殺し屋
六平直政 モグリの医者

超簡単なあらすじ

東京にいる神崎、井村、美里は、仲間の柴から連絡を受けて北海道へ向かう。柴は麻衣という若い女と暮らしていて、夜の街で知り合った角町から現金輸送車を襲う話をもちかけられていた。
角町はライブハウスの開店資金に5000万円が必要。現金輸送車には2億円の現金が積まれていて1人5000万の分け前を予定していたが、輸送車を襲い手にした総額は5000万円。すぐに金が必要な角町と借金を返済しなければならない井村は呆然となる……。 

 感じたこと 

ずっとタイトルが気になっていてようやく観ることができました。
いつかギラギラする日」は、wikiによると別の話のタイトルだったそうです。

いつか『キラキラする日』だったら、キラキラ女子のサクセスストーリーみたい。

www.youtube.com

 

神崎の部下の井村も柴も訳ありで金がほしい。
結果的にはその弱みに角野がつけ込むようにして犯行は決行されますが、手に入った現金は5000万円。
角野は井村と柴を手にかけ現金を持ち逃げします。

角野を追い詰めようとする神崎でしたが、柴の女で角野と親しい麻衣が割って入り、物語は違う方向に展開します。

最初、荻野目慶子が演じる麻衣の存在はお飾り的存在と思わせておきながら、神崎、角野を押しのけて重要人物として君臨していくのです。

 

「私を見て! 誰か私を見て!」と若い女性にありがちな自意識を消化できず抱えたまま発散されることなく発酵させてしまった麻衣のキレっぷりがよかった。

麻衣は、柴の愛人でありながら柴が瀕死の状態になっても感情は動かず、満たされない自己顕示欲に悶々としています。
若さゆえの刹那的で残酷な感情を角野と麻衣は、神崎に向かって爆発させていきます。

色々な意味で想像していたよりも遥かにぐっとくる映画でした。

 

たとえばカーチェイス一つ取っても、もちろん古い映画なので繊細な映像ではありません。

けれどCGのない本物のカーチェイスは凄まじい緊張感がありました。
一度で撮り切らなければいけないから必死ですよね。
スタッフたちのそういう緊張感が画面を通して伝わる映画は素敵です。
CGの作品は繊細で美しいものが多いのですが、観る側に訴えかけてくる緊張感の質が違うなとこの映画を観て改めて感じました。

この時期にこの監督が撮ったからこそ、このような生命力溢れる作品になったのであって、おそらくこういった作品を現在撮ってもここまでの臨場感は伝わらない。
そんなことを考えながら観ていました。

 

この映画には豪華なキャストが出演していますが、萩原健一と荻野目慶子のための映画だと言い切っていい気がします。

荻野目慶子は現在は結婚されてあまり仕事をしていないみたいですが、私生活で色々とありすぎたことが影響しているのか、あまり見かけることはなくなりました。


萩原健一が出演する映画は何本か観たのですが、個人的にはドラマの『君は海をみたか』の一見静かで普通の人間という役柄に惹かれたことを思い出しました。

今回の神崎は真逆の役で、萩原健一にとっては比較的演じやすい役柄だったのではないかと感じます。
 

「人間は完全に自由でない限り 夜ごと夢を見続けるだろう」
この映画の冒頭で登場するフランスの作家、ポール・ニザンの言葉。

 

結局のところ自由を謳歌するためにギャング稼業に足を踏み入れたところで、金と命に追われ、完全に自由どころではない、夢は見ているということなのでしょう。

 

夢見がちな人生だけど、それもいいかな。


今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
のじれいか でした。


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