【映画】夏への扉 ーキミのいる未来へー 理想の未来に向かって過去を変える、鉄板のSFだ!【ネタバレ・感想】
未来から過去を変える、ちょっと変わったタイムリープです。
過去は、未来と同様に不確かなものであり、
あらゆる可能性が繋がって存在する。
映画の冒頭で、ホーキング博士の言葉の引用が流れる。
この言葉は、本作品の要旨を示しています。
作品情報・キャスト
公開年度 2021年
上映時間 118分
監督 三木孝浩
原作 ロバート・A・ハインライン
キャスト 山﨑賢人 、清原果耶、藤木直人、夏菜、眞島秀和、田口トモロヲ、原田泰造
あらすじ
1995年。ロボット開発の第一人者である高倉宗一郎は、亡き父の親友で、故・松下と共に研究してきたプラズマ蓄電池の完成が目前に迫っていた。研究者として多忙な宗一郎だが、松下の娘の璃子と猫のピートとは、心を許した穏やかな関係を築いている。
だが、宗一郎は、会社を共同経営する璃子の叔父の陰謀から、経営者の座を追われ、これまでの研究結果も奪われてしまう。
失意の中にある宗一郎は、巷に普及する冷凍睡眠(コールドスリープ)で入眠して現実逃避をしようとするのだが…。
こんなときにオススメ
・古典的なSF作品を映画で楽しみたいとき
・一緒に見る人を選ばない映画を見たいとき
・明るい近未来の映画が見たいとき
・爽やかな恋愛映画が見たいとき
感想(よかったところ)
今の時代だから見たいストーリー
研究施設を奪われた研究者が、未来のために過去を変える話。
そのためにコールドスリープや瞬間時空移動といったアイテムが登場します。
この映画、導入が長いこともあって、なぜ1995年が舞台?と軽く疑問に感じますが、30年間入眠することで舞台は2025年に移ることで納得できます。
主人公の山﨑賢人演じる宗一郎は、眞島秀和演じる松下の弟・和人と、夏菜演じる和人の愛人・白石にすべてを奪われてしまう。ヤケになった宗一郎は、現実逃避するためコールドスリープしようとしますが、愛する璃子を残していくことに気づき、闘う意思を固める。
ところがコールドスリープを検討していたことを、悪どい白石にバレて「だったら眠らせてやる」と強引に入眠させられ30年間の眠りにつく羽目になる。
あっという間に30年間が経過して目覚めた宗一郎は、慌てて璃子の行方を探す。
すごく夢のある展開で、AIやメタバース社会が現実になりつつある現代、遠い未来の出来事ではないような気がして楽しめます。
この小説は1958年に書かれていますが、この時代に映像化したくなる気持ちはわかる気がしました。
90年代テイストの入れ方がうまい
宗一郎と凛子が青春を過ごした1995年の時代感を出すため、音楽の存在は欠かせません。
当時、璃子が好きだった曲は、宗一郎にとって璃子を思わせるアイテムになります。
ミスチルっていうのはベタですが、多くの人に響きそうですね。
AIピートを演じた藤木直人が最高!
1995年にコールドスリープして、30年後の2025年に宗一郎は目覚める。だけどそこで待ち受けていたのは璃子と猫のピートの死という悲しい現実でした。
ショックを受ける宗一郎を支えるのはヒューマノイドロボットのピート(PETE)。PETEは、宗一郎が璃子の死の真相を探り、運命を変えようとすることに尽力する非常に頼もしい助っ人です。
アンドロイドのPETEを演じるのは藤木直人ですが、この役はすごくよい。ハマり役でした。人間らしさを排除しているけれど決して冷たくはない。個人的に藤木直人は『ホタルノヒカリ』が最高だと思っていましたが、今回の役は新境地を開いた気がしました。
あと付け加えになりますが、アンドロイドを演じる役者が皆さん激ウマです。特に受付嬢のアンドロイドが素晴らしい。必見です!
脇役によって支えられる物語
この物語は主人公・高倉宗一郎がコールドスリープで30年後目覚め、失った時間の間に起きたことを回収して、未来を変えるため奔走する話です。
そのため宗一郎は大変忙しいのですが、この話のよいところは宗一郎がたった一人で頑張るのではなく、宗一郎を支える影の協力者の存在が大きいところだと言えるでしょう。
腹黒い連中に失脚させられた宗一郎を支える力強い助っ人の存在が、物語を単なるタイムリープとは違う人間愛のある物語へと昇華させています。
田口トモロウ演じる時間転移装置の開発者の遠井は、元大学教授でしたが、研究費用に大学の資金を流用してクビになっている。でも研究にはとことん熱心です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でクリストファー・ロイドが演じたブラウン博士を思い出します。
原田泰造演じる弁護士の佐藤は、瞬間移動してきた宗一郎とPETEの世話をする人物です。やがて璃子の養父にもなることになります。
佐藤と遠井そしてPETEによって、宗一郎はループになっている過去と未来を一つに繋げる仕事を成し遂げることができたのでした。
ハッピーエンドの爽やかSF
SF作品というと、絶望と不条理がウリになっている物語が多い気がしますが(個人的には大好物)こちらの『夏への扉』は、夢と希望が根底にあるストーリー。
なので子供とでも楽しめますし、誰とでも見れるところがいいですね。
同じハインラインの小説の映画化では『プリディスティネーション』は、本作と同じく過去と未来がループになっている話ですが、前者は絶望と不条理が押し寄せる話なのですが、物語の着眼点はおそらく同じ、設定で随分と変わるものです。
感想(残念だったところ)
タイトル『夏への扉』が伝わらなかった
この物語のタイトル『夏への扉』は、好奇心旺盛な猫のピートの行動を示しているのですが、最後まで見てもタイトルの意味はほぼ伝わらず残念でした。
タイトルの意味を想像させる台詞は、宗一郎の口から語られますが、そこだけ翻訳した原作を差し込んだような取って付けたような違和感が残りました。
また猫のピートが登場する前半から中盤までの流れにも無駄が多く、時間的に妙に長かく構成がおかしく感じました。例えばですけど、夏菜が演じた秘書のお色気場面は無駄だったんじゃないかと。そこが楽しみな人は別ですが。
ループの繋がりが見えない
明るい未来へのループを繋げようとする宗一郎を助ける、遠井と佐藤の二人ですが、どこで宗一郎と繋がっていたのか見えてきません。未来の宗一郎の行動なので、見知らぬ人物でよいのかもしれませんが、それにしても唐突に感じました。
まだ遠井については、資金流用が発覚してマスコミに追われる姿を、宗一郎がテレビで見ているため、協力を仰ごうと近づいたのはわからないではない。
けれど佐藤の存在は、過去にまったく登場しないので疑問が残ります。
それではまた。
のじれいか でした。