のじシネマ

映画の感想を書いています。絶望と不条理を映画に求めてしまいがち。ときにネタバレ。

 本サイトはプロモーションが含まれています

【映画】ルートヴィヒ[完全復刻版]あらすじと感想 狂王と監督の重なり合う人生

ルートヴィヒ

ざっくりいえばこんな話

バイエルン王国にて1864年-1886年まで即位した国王で、芸術と建築に散財した狂王といわれた男が、反対勢力によって失脚させられ自死するまでの話。

f:id:nojirika:20200303181301j:plain

作品情報・キャスト

公開年度 1972年
上映時間 237分(デジタル復刻版)

監督 ルキノ・ヴィスコンティ

キャスト ヘルムト・バーガーロミー・シュナイダートレヴァー・ハワード

 

 

簡単なあらすじ (歴史のお勉強)

1864年、19歳で即位することになった若いルートヴィヒは王位に即位することに戸惑いを感じていた。
王になってからも自分の美意識を大切にするルートヴィヒは、従姉でオーストリア皇后のエリザベートに心を許し、恋心を抱いている。
エリザベートはルートヴィヒとの共通点を認め、自分の結婚の愚痴を言いつつも、一国の国王として落ち着くためにもルードヴィヒと自分の妹を結婚させたいと考えていた。

ルードヴィヒは政治に関心を示さず、ワーグナーミュンヘンに呼び寄せることに力を注ぎ、彼らに言われるがまま莫大な資金を払う。
ワーグナーの公演が開催されて、気持ちが満たされるルードヴィヒだが、ワーグナーの更なる金銭の要求に加えて、ワーグナーが専属指揮者の妻と愛人関係にあることを官僚から知らされ、ワーグナーミュンヘンから出すことに。

そしてエリザベートのすすめに従って彼女の妹ゾフィーとの結婚を決める。そして城を建設すると言い出すのだった。
万事順調に進んでいるように見えたが、ルードヴィヒはゾフィーを愛してはおらず、 自分が男色であることを認め、気に入った下男をそばに置き、心のままに振る舞うようになっていく。

そして豪華でこだわり抜いた自分だけの空間を作り上げたルードヴィヒは城に篭るようになる。

普墺戦争が勃発し、バイエルンオーストリアと同盟を組むことになっが、戦争が嫌いなルードヴィヒは動員署名を嫌がるものの、仕方なく署名する。
 

その後、ルードヴィヒはますます精神を病み、昼夜が逆転した生活を送るようになる。家臣たちはルードヴィヒを退位させるように仕向け、それを知ったルードヴィヒは服毒自殺を希望する。

ベルク城に送られたルードヴィヒは外に出たいと言い出し、精神医を連れ立って散歩に出たまま帰らず、翌日水死体になって発見された。

ルードヴィヒは医師を殺害し、自殺したと発表される。
死亡は1886年6月13日、40歳だった。
 

感想・レビュー

現在のバイエルン地方が一国だったときの話で、すごく昔を想像してしまうのですが、国としては1918年まで存在していたので、案外最近の話なんだなと軽く驚きました。

ルードヴィヒは精神を病んでいたとか狂王だとか言われていますが、お金を使って戦争をするよりはお金は使ったけれど戦争を嫌ったわけで(実際はする羽目になったが)それをを考えると案外悪い王ではなかったように思えます。

実際のルードヴィヒは幼い頃から父マクシミリアン二世から帝王学を叩き込まれ、厳格に育てられてきたそうです。

王位を継ぐ者はそうやって特別な教育を受けて来る日に備えるものなのでしょうが、それでも向き不向きはある。
国王として無期限で国を統治し続けることには相当な気力と体力が必要で、簡単にいってしまえばルードヴィヒは王には不向きの人間でした。
それでも王にしかなれない。
他の生き方を知らないから、城の中に逃げ込んでしまうことが手っ取り早い解決方法だったのでしょう。でも所詮は逃避ですから、追い詰められて長い年月の間に苦しみ、精神を病んでいくわけです。

現代的にたとえれば「壮大なる引きこもり」とでもいったところでしょうね。

それが許されるぎりぎりまで続けたけれど、許されないとわかった時点で命を絶った。実にシンプルでわかりやすい思考です。

イタリア貴族のルキノ・ヴィスコンティ監督は歴史ある城で育ち、何世紀も昔の最上級のものに囲まれて育ったといいます。

美しい世界を極めれば、それが失われることを恐れるようになる。
劇中の城や、室内、調度品、装飾品の数々は一般の人からすれば、贅沢の極みのようにしか見えませんが、おそらくヴィスコンティにとって郷愁を感じる風景だったのではないでしょうか。

またヴィスコンティは、ルートヴィヒ役に長年の愛人とされるヘルムト・バーガーを起用しました。
それによってヴィスコンティにとってこの作品は、過去と現在を昇華させた特別な作品になったのでしょう。
ヴィスコンティはすなわちルートヴィヒそのものであり、映画という永遠に自分自身とその世界を閉じ込めた、そんなふうに感じました。


ルートヴィヒ がお気に入りの舞台俳優カインツに「ご褒美」の赤いカルティエの箱を贈ったところは面白かった。
その後、カインツの指には驚くような大きさのダイアモンドが輝きます。
ヴィスコンティ自身もヘルムト・バーガーにそうやってご褒美を贈ったのでしょうか。 

  

配役で光っていたのはやはり、エリザベート役のロミー・シュナイダー
撮影当時、彼女はおそらく34歳だったはず。
調度品に負けない美しさを放っていますが、その10年後にはこの世を去ってしまうことを予測できたた人はいないと思います。

歴史として、オーストリア皇后エリザベートは、贅沢好きで自由な女性でしたが60歳で暗殺されています。


劇中エリザベートが、ワーグナー固執するルートヴィヒに向かって放った言葉が印象的でした。


「感傷的な友情は想像の幻想を生むだけよ」

 

これは素晴らしい台詞 

 

バイエルン王国はルードヴィヒ亡き後、実の弟、オットー一世が即位してから三人の国王、摂政を経て、1918年にドイツ帝国の廃止と共に滅亡しました。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
それではまた。
のじれいか でした。

 


映画レビューランキング