【映画】花宵道中 絶望から救われる術は恋しかなかった時代 ネタバレ・感想
私を離さないで。
江戸の遊郭の花魁が、初めて「気をやる」相手は、結ばれない運命の男だった。
作品情報・キャスト
公開年度 2014年
上映時間 102分
監督 豊島圭介
原作 宮木あや子
キャスト 安達祐実、淵上泰史、小篠恵奈、三津谷葉子、松田賢二、高岡早紀、津田寛治
原作が宮木あや子だから『吉原炎上』なんかと比較すれば、ロマンチックな遊郭の風景ではある
しかし、正直に言えばと、オチがわかってしまう話ではあるね(オチで見る話ではない…)
イントロダクション
江戸時代の吉原。朝霧は年期明けを控えた女郎だ。
幼い頃から苦労を重ねてきた朝霧は、女郎たちが男に酷い目に遭わされてきたのを目にしてきた。だから自分は何者にも頼らずに生きていこうと思っている。
ある日、縁日に出かけた先で、朝霧は半次郎という青年と出会う。孤独だった朝霧の心に半次郎の存在が沁みるように広がり、やがて二人は恋に落ちる。
しかし、そんな二人に運命はどこまでも厳しかった。
話の背景にあるもの
女が望むエロさを描いた宮木あや子のスゴさ
この話は、宮木あや子のデビュー作です。
新潮社の主催する『女による女のためのR -18文学賞』という一般公募の文学賞で、2006年に大賞を受賞したのが本作品。
この文学賞、現在は公募内容が変わりましたが、当時は女が読むエロ小説を女が書くといった企画内容でして、よって男目線ではないエロさが描かれているわけです。
津田寛治の「ドS」ぶりが見どころ
朝霧と半次郎の恋に割って入るのが、津田寛治演じる吉田屋の旦那。このエロ旦那、とことん他人の恋路を邪魔をしていきます。
最初は、吉田屋が行商の半次郎を連れていった座敷に、女郎を呼びますが、そこに現れたのが朝霧。皮肉にも朝霧にとって吉田屋は馴染みの客でした。
朝霧と半次郎が面識があるのではと、何となく察した吉田屋は、わざと半次郎の目の前で、朝霧を弄ぶ。
恥ずかしさと気まずさ、自分の立場の惨めさ、運命の悪戯に、朝霧は身悶える。
だけどその反面、半次郎の視線が熱くなればなるほど体は滾ってしまう。
原作でも映画でも、後に朝霧と半次郎は結ばれますが、はっきり言って見どころは、吉田屋×朝霧 それを見ている半次郎、この三者が絡む場面です。
その異常性というか非日常性を思いついた宮木あや子は、真のエロスを知る女だと言えるでしょう。
キャストのことや結末(ネタバレあり)
安達祐実の女郎はどうだ
本作で安達祐実は肌を晒し、まさに体当たりの演技をしています。朝霧は「気をやる」と肌に花が咲くという、またエロい体質の女性で、そこがウケて人気な女郎。
そんな雰囲気は、華奢な体型の安達祐実には合っていたと思います。
相手役の半次郎を演じた淵上泰史は、今っぽいシャープな俳優ですが、本作では無骨なまでの一途さがよく出ていたと感じました。
監督は怪奇作品がお好き
本作品の監督、豊島圭介は、怪奇作品を多く手がけている方です。
それでなのか、ディスっているわけではありませんけれど、もっとセンチメンタルな作品に仕上げてもよいところ、実録モノに寄せているような印象がありました。
あと安達祐実以外の女優のインパクトが弱めなのが残念でした。唯一よかったのは、回想として登場する亡くなった先輩花魁の霧里を演じた高岡早紀でしょうか。
原作では、朝霧の妹分である八津は、半次郎を本気で愛していく朝霧を見つめる重要な役柄なのですが、そこまで存在感を示せていない印象です。
ほかの花魁も滝川華子、三津谷葉子と、めっちゃ美人が揃っていますが、そこは脇に徹してオーラ控え気味にしているのか、安達祐実の輝きには叶わないのか、そこは不明ですが輝きは弱いです。
物語の結末は?
半次郎は、吉田屋の親戚の娘との縁談を持ちかけられますが、断ります。
一方で、朝霧は吉田屋から見受けの話を持ちかけられる。あと1年で年季が明ける(借金返済完了)ので、受け入れなくてもよいところ、半次郎の結婚の話を聞かされていたため、申し出を受けてしまう。
でも吉田屋は芯から腹黒い男で、これまでも女郎を見受けして、仕事の接待に使い倒し、その後はポイ棄てしていました。
かつて、朝霧の姉貴分だった霧里を吉田屋が見受けしましたが、やはり同じようにして使い倒して死なせていました。
吉田屋に近づいた半次郎の目的は、吉田屋によって実姉を殺められたと疑っていたから。しかも半次郎の姉は、霧里だったことがわかります。
すべてを知った朝霧は、吉田屋からの見受けを断りますが、すでに書類は交わされている。
そんな吉田屋を成敗した半次郎は、逃走して身を隠すが、どうしても朝霧に逢いたくなり、危険を犯しても逢瀬のひとときを過ごす二人。
それにより半次郎は捕らえられ、朝霧と引き離される。やがて半次郎は打首になったと聞かされた朝霧は、半次郎の後を追うのだった。
悲しい話だわ。(エロいけれども)
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
のじれいか でした。