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映画の感想を書いています。絶望と不条理を映画に求めてしまいがち。ときにネタバレ。

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【映画】『もういない』(Assassinée)【事件は解決するが、事件は伏線?】地味めストーリー 

『もういない』すごいタイトルですよね。

娘を殺害された母親の葛藤を中心に描いた作品です。 

 

原題はフランス語、Assassinée「殺害」って意味よね 

 

子供を失う絶望的は話を扱っている映画は案外多いと思うのですが、この『もういない』は若くして結婚し、早くに生まれた娘を溺愛している母親が主人公。

娘の自立を快く思わない、娘に依存気味の母親という設定です。

 

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もういない

あらすじ


医大を卒業して前途揚々な娘エバは20歳の誕生日を迎える。
誕生日の当日、母キャシーはエバへのプレゼントの赤い車をリボンで飾り、友人らを招くパーティの準備で忙しい。

パーティが始まったのに肝心のエバが現れないことを不審に感じたキャシーは、エバを探しに出向く。

そこで身元不明の若い女性の遺体が発見されたと通報を受け、キャシーは元夫でエバの父親リチャードと警察署の待合に佇むのだった。

作品情報

 
公開年度 2016年
上映時間 93分
監督 Thierry Binisti

 

 

キャスト 

キャシー/エバの母親    Patricia Kaas 

リチャード/キャシーの元夫 Serge Hazanavicius  

ロラン/エバの息子 Raphal Boshartë

 

子供を亡くした親の辛さもわかるが、
本人の無念さにはかなわない


手塩にかけて育ててきた子供を失ったキャシーと の辛さは想像にあまるものがあります。それも20歳の誕生日に。

離婚したとはいえ、娘の両親であるキャシーとリチャードは寄り添います。
そして犯人を捕まえることに懸命になります。
怒りの相手を明確にすることで、かろうじて自分を保っているかのように。

 

ですがリチャードは再婚していて血の繋がりはないけれど子供がいます。
またキャシーはエバと比べてしまいがちですが息子のロランがいる。一人ではありません。
キャシーは若いときにエバを出産し、現在は40代の前半。十分やり直せる年齢です。


そしてキャシーはエバを殺害した犯人を探すうち、自分の知らない娘の顔を知っていくことになります。

エバ医大を卒業した20歳の女性なのですから、普通に考えれば母親に全てを打ち明けているのもおかしな話です。

エバは自分に執着するキャシーと距離を取ろうと考えていました。
だからわかってしまえば当然のように反対されるであろう、年上の男性との恋愛関係も友人だけに打ち明けてキャシーには秘密にしていました。

キャシーは色々と明らかになっていくエバの気持ちに傷つきながらも、娘が大人になっていたことをなかなか認めようとしません。

そして実はエバは恋人との子供を妊娠し、産むつもりでいたことがわかります。

キャシーとリチャードの苦しみをこれでもかと描いてきますが、誰より無念なのは殺されたエバ本人なのでしょう。

 

子供を亡くした話といえばこれも。

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フランスの殺人事件とマスコミの実情


エバの殺害が明らかになり、警察による捜査が開始され容疑者は浮かび上がりはするものの、容疑からは外れてしまい、その後捜査は難航します。

判事の元を訪ねると、告訴するかと聞かれます。
フランスは日本とは違って予審判事が尋問をおこない、容疑を認めたときは裁判所に送致するという権限を持っているそうで、そのあたりのことも描かれています。


被害者の両親は間接的な被害者とみなされるので、容疑者が捕まっていなくても告訴する場合は手続きが必要になるなど、そういったことです。

またエバの事件はマスコミに報道されてしまい、家族は矢面に晒されることになります。警察で取り乱していたキャシーの側にたまたま居合わせた記者の女性が、キャシーが落としたIDカードなどから身元を知って事件をリークしたためでした。

しれっとしているのですが、なかなかやってくれます。

しかもこの記者、今度はキャシーから協力を求めらたときには、世間の関心が薄れていることを理由に相手にしません。

なかなかの冷たさです。印象として確かにフランスの人はシビアそうですが、実際はどうなのでしょう。

 

犯人は身近なところに


狂ったように犯人探しを続けるキャシーでしたがリチャードは自分の家庭を放り出すわけにはいきません。

キャシーも友人や妹から今を生きた方がいいとアドバイスされて、少しづつではありますが日常を取り戻すようになり、やがて犯人探しをやめることにします。

 

容疑者としてエバの元恋人や、弟のロラン、実父のリチャードまでが取り調べを受けてきました。真犯人は彼らほど身近ではありませんが、話にはちょくちょく登場する人物でした。
たぶん見ているとわかると思いますし、それは思いがけないことから発覚します。

感じたこと


暗くて重い映画です。ヴィジュアル的な見所はあまりないし、華もありません。

エバが殺されたときに私の中の何が死んだとキャシーが語るところはすごく共感できましたし、苦しみながらも一人の女性としての人生と、自分を必要とする息子への愛を抱えて生きなければと矛盾と葛藤するのもわかる気がしました。

9月24日にエバはその前日に殺害されてからのおよそ一年間後に犯人が捕まりますが、家族の人生はエバがいなくなっても静かに動いていく。そんな話です。

最後にキャシーは被害者団体で働くようになり、その後は本を出版することになります。リチャードは仕事に没頭。

救いを得て前進しようとするラストにはなっています。

淡々としていますが引き込まれる話です。静かな夜には相応しい話かもしれません。

 

 静かな気持ちのときに観たい映画。

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それでは、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
のじれいか でした。

 


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